企業の都合だけでなく働く障がい者に「寄り添った」内容が決め手でした。D&Iのオーダーメイド社内研修で起きた変化は
パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社様
人事総務部 採用課
月本 小奈恵 様(写真中央)
岡本 友紀 様(写真左)
小宮 麻依 様(写真右)
聞き手:大阪営業所長 畠山 千夏
*撮影時のみマスクを外しております
「人・社会・地球を健やかにする」をミッションに掲げ
――まずは会社について簡単にご紹介いただけるでしょうか?
月本様:
パナソニックは2022年4月からの持ち株会社化を発表しました。この狙いは、パナソニックにある多くの事業が、それぞれに競争力を高め、社会へのお役立ちを果たしていくことにあります。4月からエレクトリックワークス社も一つの事業会社として、今まで以上に、主体的に社会に向き合うことが求められると考えています。
岡本様:
我々エレクトリックワークス社は住宅、オフィス、商業施設、スポーツ施設など社会を構成するあらゆる暮らしの空間で事業を展開しています。
電気設備とデジタル技術を核としたソリューションで、より安心で快適な空間をお届けし、その空間で誰もが健やかに活き活きとした時間を過ごしてほしい。そのような使命を持って私たちは働いております。
LED照明や「エネファーム」などがみなさまの暮らしになじみがあると思います。
――エレクトリックワークス社の場合、障がい者雇用はどのように取り組まれていますか?
月本様:
エレクトリックワークス社の障がい者雇用窓口として、この3名が担当していますが、事業部毎にも人事担当者がいて、採用や定着活動を連携して進めています。
会社全体に障がい者雇用が定着するために、我々が今、最も力を入れていることが今回D&Iにお願いしたような意識啓発を目的とした勉強会等の開催です。
事例と実践が豊富、当事者の立場に寄り添った内容のセミナー
――今回は人事社員を対象とした「精神障がい者の雇用促進に向けた、 職域開拓と採用時の見極めのポイントに関する研修」の実施ご依頼をいただきました。エレクトリックワークス社の場合、特例子会社も含めると法定雇用率2.3%を達成しており、雇用は順調に進まれているようですが、どのような課題感があったのでしょうか?
小宮様:
これまでも社内勉強会を開催し、事業部の人事担当者が障がい者雇用に関する理解を深めることで採用の実績にも繋がってきました。ただ障がい種に偏りがあり、今後は、精神障がいや発達障がいの方々も積極的に採用を進めることが課題と考えています。
そこで今後、幅広い障がい種の方々にエレクトリックワークス社で活躍いただくためにも、まず、採用を担当する我々人事が、精神障がいについて理解することが重要だと感じておりました。
――弊社では毎週のように様々な無料セミナー( https://d-and-i.jp/seminar/ )を開催しておりますが、そちらも何度も受講していただいておりましたね。
小宮様:
はい、勉強会を依頼するにあたって、様々な会社のセミナーに参加させていただき、セミナーの内容、講師の話し方などを比較させていただきました。
D&Iのセミナーは当事者の方との実際のやり取りから得た経験値を元に事例を紹介されていたことが印象深かったですね。
多くのセミナーでは「雇用率の達成」や「戦力化」といったメッセージが目立つ中、D&Iのセミナーはそれだけではなく当事者の立場に寄り添った内容だと感じました。
――「障がい者雇用」と言っても、会社で働くとは「人と人」の関わりなので、相互理解が大切なのですよね。D&Iが大切にしているメッセージを受け取ってくださりありがとうございます。
月本様:
知識ももちろん必要ですが、特に精神障がいの場合、障がい名だけでひとくくりにできないと思っています。私の経験では、どういう配慮が必要で、どんなことができるか、実際に会うことで、一人ひとり違うことが分かったので、
今回の勉強会は「実際に精神障がいの方との接点を持つ」ということを軸に研修の企画をお願いしました。
――D&Iとしてはそれぞれの会社さんのやり方、カルチャー、解決したいことがあると考えているのでセミナーもオーダーメイドにこだわっています。開催にあたってたくさんのディスカッションを重ねましたよね。
月本様:
本当に畠山さんには申し訳ないくらい、てんこ盛りなオーダーで(笑)。
通常ある程度「パッケージ化された研修コンテンツ」があるはずですが、弊社のために手間を掛けて、コンテンツを考えていただきました。
――これまでのコンサルティングやセミナー運営のノウハウを全部詰め込んで、お応えしました !(笑)
小宮様:
具体的には実践的な内容となるよう、ワークを取り入れいただき、第Ⅰ部は「業務の切り出しワーク」、第Ⅱ部は「面接のワーク」といった二部構成でお願いしました。「勉強会での体験をベースに、実際の面接のきっかけにしてほしい」との意図があったので、面接ワークで、ロールプレイングの時間を多くとってもらいました。
事後アンケートでは、「満足した」との回答が第Ⅰ部95%、第Ⅱ部100%となり、満足度の高い勉強会になったと思っています。
開催のコスト面も、オーダーを細かく聞いてくださった上でしたので、我々としてはありがたい金額でした。
開催後、人事担当者に起きた変化—「まずは会ってみましょうか」と面接に
――勉強会実施後に社内で変化はありましたか?
小宮様:
大きな変化で言うと、人事担当者の「面接に対する心理的ハードル」を下げられたことでしょうか。
月本様:
私たち採用課が書類選考し、事業部に推薦しても、精神障がいの場合、障がい名を見て、お見送りとする機会が多かったのですが、勉強会後は「まずは会ってみましょうか」という反応が増えてきたと感じています。
それから、若手の人事社員からは、「勉強会で、せっかくワーク体験できたので、ぜひ次回は自分で面接してみたい!」と、うれしい声を聞いております。
――短期間でそこまで行動・意識に変化が生まれるのは素晴らしいことですね。実際、受講者の参加意識も非常に高かったと講師をしながら感じておりました。何かそのような土壌があるのでしょうか?
月本様:
組織において障がい者雇用に関わる人であれば、「社会的責任」として、会社の発展のためにも取り組もうという認識は誰しも心の奥底にあると思っています。弊社の人事担当者には、特にその思いが強い人が多いのかもしれません。
面接を通して「この人だったら大丈夫」と判断する軸や自信を持てるようになってほしいとの狙いがありました。
面接のロールプレイングでは「障がいの状態についてもっと深堀して良いんだ」、「質問の仕方や、雰囲気作りで学ぶ点があった」と気づきの声も多く聞け、今回の勉強会の効果を実感しています。
――現場担当者の中にある「遠慮」「不安」へアプローチした内容だったので、実行に移していくための背中を押せることになったのかもしれません。
岡本様:
また、現在パナソニックグループでは、多様性を活かす活動としてDEI(Diversity, Equity & Inclusion)の取組みを強化しています。
DEI推進で重要なことは、私たち一人ひとりが、自ら変る、というチャレンジです。エレクトリックワークス社では、ボトムアップ活動でも意識は高まりつつあります。特例子会社の見学で障がい者雇用事例を学んだり、ボッチャ体験会の実施や、多様性を学ぶセミナーの企画・開催に取組んでいます。また、グループ内の会社の枠を超えて、ざっくばらんに語り合うようなコミュニティにも積極的に人が集まってくるようになってきました。
――ボッチャはパラリンピックでも話題になりましたね。パナソニックの社内ではそのような環境が当たり前にあったのだと分かりました。
業務切り出しは「障がい者雇用のために業務を集約する」だけではなく…
——それでは、今後さらに取り組んでいきたいことを教えていただけますか?
月本様:
障がい者雇用とDEI推進を強くリンクさせるためにも、より広い視野で一人ひとりが個性を発揮し活かしあえる環境づくりを考えていく必要があるなと考えております。
特例子会社や障がい者雇用が進んでいる会社を見学させていただいて気づくのですが、「ここに物が置いてあったら危ないよね」とか「情報セキュリティもこのチェック体制ならミスがおきないよね」とか……。障がい者のためにではなく誰もが働きやすいようにという視点で職場環境が整えられています。
今回勉強会で業務切り出しをテーマとしたのも、「障がい者雇用のために業務を集約する」のではなく、組織全体で生産性を上げるための業務プロセス改善に活用できるということに気づいてほしいと思っていました。そこに気づけば、障がい者雇用を特別な取組みと捉えず、ハードルが下がると考えたからです。
――そうなんです! いわゆる「業務切り出し」は障がい者雇用をきっかけにおこなわれる企業さんが多いのですが、「社内の業務を整理する・分配し直す」というのは企業活動にプラスになるのですよね。
月本様:
はい。今回お願いした勉強会は「切り出す/受け入れる/採用する」という、障がい者雇用のスタートラインでした。
採用後の「定着」についてはまだまだ配属職場頼りとなっているので、配属職場の課題や悩みを聞いた上で、より良い環境や組織の風土作りも進めていきたいです。
真のインクルージョンを目指し、社内の理解の広がりを追い風にしつつ、より力を入れていきたいなと考えています。
――ありがとうございます、エレクトリックワークス社として規模感の強みを活かしつつ、本質的な障がい者雇用、DEIがおこなわれていると感じました。これからもぜひその「思い」の輪を、共に広げていけたら幸いです。
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