入社者の特性を「障害」ではなく「個性」だと感じています。面談のレポートを通じて、こちらの固定概念や先入観を変えていただいたように思いますね。
ワタベウェディング株式会社様
人財開発部 渡邊 達矢様
人財開発部 田家 めぐみ様
2019年入社者 T様
結果的に成功とも言える採用活動。しかし、工数の課題が残っていた
――始めに、御社の事業内容を改めて教えていただけますでしょうか。
当社は、国内および海外の挙式プロデュース、ドレスやタキシード等の衣裳の製造・販売、ECによる挙式商品の販売など、「総合ブライダル事業」を行っていますが、「ワタベ衣裳店」という貸衣裳屋からスタートしています。
戦後、戦時中に結婚できなかった若者たちは挙式を希望したものの、貧しさから肝心の晴れ着を用意できませんでした。
その様子を目にした創業者の渡部フジが、自分の衣裳を無償で貸し出したことがきっかけです。
そのような創業の経緯があるためか、当社にはホスピタリティマインドの強い社員が集まっているように思います。
――D&Iの人材紹介サービスのご利用前の御社の採用活動はどんなご状況でしたか?
ハローワークや他の人材会社様主催の合同説明会を通じて、年間で1名くらいのペースで順調に採用ができていました。
ただ、結果的に採用はできていたものの、その過程では「工数がかかる」という課題がありました。
面接会に出展するとなると、対応する人員を割かなくてはならず、ご応募いただいた方の書類選考、その後の選考結果の通知などの対応に追われてしまったんです。
また、その工数をかけて内定した方でも、以前のオフィスではバリアフリーになっていなかったため、設備的な面で受け入れの体制を整えられないケースもありました。
ですので、工数の観点と併せて、当社でご用意できる環境を事前にご理解いただいた上で、マッチする方をご紹介いただくという人材紹介を利用する形に落ち着いたんですよね。
――人材紹介サービスを通じて、約3ヶ月半で2名の方をご採用いただきました。実際にサービスをご利用されてみて、ご印象はいかがですか?
第三者がフォローしてくれるという点が、非常にありがたいなと思っています。
面接会で候補者の方と1対1でお話しする機会もあるのですが、ご自身の障害について、どういう特性があり、どういう配慮が必要なのか、ご自身の言葉で十分に伝えられない方も中にはいらっしゃるように感じます。
人材紹介であれば、営業担当の方が第三者として入ってくれますし、「御社からはこういう配慮が必要です」ということを中立の立場で教えてくださるので、非常に理解がしやすいです。
また、ご入社いただいたTさんに関しては、とてもホスピタリティマインドに溢れる方でしたので、お人柄面も会社にマッチした方をご紹介いただけたと思います。
――人材紹介サービスを通じてご入社いただいたTさんですが、ご入社後のご様子はいかがですか
Tさんは、自分で主体的に動こうという意識がとても高い方で、仕事を任せたら「そんなに重く考えなくていいよ」と、こちらが思ってしまうくらい責任をもって取り組み、分からないことは自ら聞いてくれるので安心感があります。
お人柄も明るく、素直な性格のため、非常にご活躍いただいているなと思います。
――ご活躍ぶりがうかがえて何よりです。次に、採用後の定着についてお話をうかがいたく思います。Tさんに限らず、これまで採用された方々の定着のご状況はいかがですか?
ここ数年で採用した方に関しては、実は一人も退職されることなく定着していただいているんですよ。
契約社員として入社され、正社員に登用された方もいらっしゃいます。
本社から離れた拠点で採用した社員であっても、社内イベントで顔を合わせた際に人事から声をかけるなど、意識してコミュニケーションを取っているので、何かあったときに相談してもらえる関係ができているのかなと思います。
また、入社された方が将来どうなりたいのかをお聞きした上で、そのキャリアイメージに合った仕事をお任せしていることも、定着に繋がっているように感じます。
障害ではなく、「その人」自身に視点を置いた定着支援
――そのように、順調に障害者雇用を進められている中でも、新たにD&Iの定着支援サービス「ワクサポ」をご利用いただいています。サービスのご感想をいただけますか?
専門のカウンセラーの方がついてくださることで、非常に安心感を覚えます。
例えばTさんの場合は、普段から顔を合わせられる状態にありますが、実際どのようなことを思って、どう感じているのかまでは分からないこともあるんです。
Tさんは責任感が強く、努力家のため、「この仕事、任せて大丈夫?」と尋ねると、「大丈夫です、頑張ります。」と引き受けてくれるのですが、本当に大丈夫かな、と気になることがあります。
「ワクサポ」では、普段業務上の関わりがないD&Iのカウンセラーの方に、「実際どうなのか」というところを汲み取っていただけて、とても助かりました。
――「ワクサポ」の面談後に、カウンセラーがTさんと面談で話した内容をレポートとしてお伝えしていますが、それをお聞きになって気づいた点などはありますか?
人事側が心配していたことが実は本人にとっては全く問題なかったり、逆に気付かないところで本人がちょっとした悩みを抱えていたり、という発見がありました。
また、カウンセラーの方は、「障害」というくくりではなく「Tさん」に視点を置いて、Tさんの特性がどうであるか、どのような思考回路を持っているか、といった細かいところまでフィードバックしてくださるんですよね。
なので、私はTさんの特性を「障害」ではなく、「個性」だと感じています。
面談のレポートを通じて、こちらの固定概念や先入観を変えていただいたように思いますね。
障害者雇用の延長線上にある、誰もが働きやすい環境を目指して
――今後どのように障害者雇用に取り組まれたいか、御社のビジョンについてもうかがえますでしょうか。
誰もが働きやすい環境というのが、障害者雇用の延長線上にあると思っています。
法定雇用率の達成に限らず、様々な特性を正しく理解して、それぞれに応じた業務内容や環境を提供できる会社を目指しています。
まずは、採用の最前線に立つ人事として、自分自身の先入観をなくしていき、それを会社全体に広げていきたいなと思っています。
――では最後に、ワタベウェディング様にご入社されたTさんにもお話をうかがいたいと思います。Tさんは前職では一般枠で働かれており、今回初めて障害者枠でご入社されたそうですが、他の職場と今の働く環境に違いはありますか?
障害者枠を選んだ理由として一番大きかったのが、「長く働ける」ことにつながると思ったことです。
体調にはどうしても波があるので、自分でコントロールが難しい事象があったとしても自分の体調や障害についてあらかじめ会社の方にご認識いただいていると、安心して長期的な就労ができるなと強く感じています。
また、先ほど人事の方の話にもあったように、ワタベウェディングはホスピタリティ精神が高い方が多い企業ですので、普段の何気ない会話や業務上の報連相の中でも、人を受容するという環境や人間関係が整っていると感じますね。
私を含め、最初は誰もが不安を抱いて入社を迎えると思うのですが、入社者としてはそのような環境が非常にありがたいですし、入社してから今日まで、その感謝の気持ちは変わりません。
――入社後も変わらずに、Tさんらしく働かれている様子がお聞きできて、当社としても嬉しく思います。ワタベウェディング様、Tさん、それぞれのご活躍を今後も願っております。