現場の声を反映し、精神・発達障害の「あるある」をケーススタディ。知識の詰め込みだけでなく「やってみよう!」と行動に移せる研修でした。
株式会社KDDIエボルバ様
総務人事本部 D&I推進部 D&I推進グループ
部長 中村 直子 様
*撮影時のみマスクを外しております
「ダイバーシティが基本」。500名以上の障害者雇用を実現した先の使命
――まずは中村様が所属するD&I推進グループについて教えていただけますか?
中村様:
私たちのD&I推進グループでは本社機能として主に「障害者雇用の促進」と「フィロソフィの浸透」を2軸として動いております。
障害者採用と職場定着、そしてマネジメント層の意識啓発に繋がる施策の展開、
また、KDDI創設者である稲盛和夫KDDI最高顧問が策定したフィロソフィ(企業活動をしていく上で大切にすべき価値観)の浸透活動をしております。
――なるほど、全5章からなるKDDIフィロソフィの1章にも「ダイバーシティが基本」とありますね。それでは障害者雇用についてはどのように取り組まれていますか?
中村様:
KDDIエボルバはコールセンター・コンタクトセンターを中心としたBPO事業を主業務としており、社員も28,000人近くおります。全国に拠点があり、500名以上の障害のある方も他の社員たちと肩を並べ、活躍しています。
これだけの社員数がおりますので、中には「初めて障害者と一緒に働く」というスタッフも多数おります。
D&I推進グループとしては、障害に対する正しい知識を強化・共有し、障害の有無に関わらず「誰もが働きやすい土壌」を作っていこうという使命をもっています。
初めての障害者雇用担当着任からセミナーの依頼まで
――これまでもD&Iが情報提供として公開している「お役立ち資料」のダウンロードや「無料セミナー」の受講など、たくさんしていただいておりました。弊社の情報に触れられた率直なご意見をお聞かせいただけますか?
中村様:
これまでも米田さんが講師の「テレワーク関連」のセミナー、今回依頼した安部さんが講師の「精神障害者雇用の採用と定着」をテーマにしたセミナーなどを受講しました。
「現場の困りごと」に寄り添い、わかりやすく、最後まで惹きつけられる内容でした。
D&I推進部を2021年7月に立ち上げ、改めて「0から障害者雇用について勉強する」となった際に、無料かつ短時間で要点をおさえられるイベントがあったのはありがたかったですね。
通常このようなセミナーは宣伝がメインになって、「続きは問い合わせへ」となりがちですが、D&I社の場合は宣伝色が少なく、また最初から価格を提示していただいているのも好印象を持ちました。
――運営している身としても少し心配になるくらいサービス精神旺盛なセミナーです(笑)。「障害者雇用を広げていきたい」「障害者雇用のハードルを少しでも下げていきたい」という思いから、有益な情報提供ができるような機会にしておりますね。
中村様:
障害者雇用枠として入社された方だけでなく、入社後に精神・発達障害が判明したり開示したりするケースもあります。
そのような背景からも障害者雇用の社内啓蒙を促進していく中で、今年度は「精神・発達障害の理解」をテーマに、上期/下期に各一回、社内セミナーを開催しようと企画しました。
上期は、「精神・発達障害の基礎知識」を題材とした研修を開催し、現場で障害をお持ちの方と共に働く社員が300名弱参加しました。下期は応用編として、現場管理者向けに事例共有を題材とした「シチュエーション別ケーススタディ」をD&I社に依頼しました。
現場に根差した「あるある!」な事例を中心に、「この教材は宝となっています」
――当日はこちらの写真のようにオンライン形式でライブ配信をおこないました。今回セミナーの狙いはどのようなものでしたか?
中村様:
既に上期に制度や障害の基礎知識は学んでおりましたので、管理者が「では、実際の仕事の場面ではどうしたら良いのだろう?」が分かり、「やってみよう」と行動に移せることを大きな目標にしていました。
現場でよくある事例や解決方法などの具体事例を共有して「こんな時どうする?」といったリアルな場面設定、ケーススタディを豊富に入れていただくようにしました。
受講者のレベルも様々な中、誰もが直面している「あるある!」を例に出していただき、そこにプロの目線の解説が加わりました。
納得して行動に移せるようになるプロセスがセミナーに組み込まれていたので受講者にとってはまず「こういったタイプの人いるな」と惹きつけられ、「あの人はこんなことを考えていたんだ」「この声かけのフレーズを真似てみよう」と次のステップに進む気づきがあったはずです。
私たちの想いとしては、日常業務に活かせる研修を実現したかったので、ケーススタディを示して終わりにするのではなく、対処法や行動に移すための考え方・エッセンスを入れるなど、セミナー開催前日まで要望を出し、柔軟に対応いただきました。
講師の安部さんはさぞかし大変だったと思います……(笑)。
――このセミナーの録画動画をeラーニング資料として今後より多くの社員の皆様に展開していただけるとのことでしたので、一層気を引き締めて企画いたしました。
中村様:
こんなにたくさんオーダーする会社他にないかもしれないですね。
しかし、どのニーズにもD&I社には柔軟に対応していただきました。
これから入社される人にも見てもらうことができますし、この教材は宝です! 有効活用していきます。
――当日参加者のアンケート結果も「業務に活かせる内容でしたか?」に対し、「大変活かせる」「活かせる」と回答いただいた方は97%を超えました。
中村様:
現場管理者からのアンケートの自由回答からも……
「遠慮/配慮の線引きの基準が分かった」
「平等と公平・公正の違いが理解できた」
「まさに最近、講座中の“よくあるケース”で出てきたような場面があった」
「対応策が分かったので、今後一緒に働く人への相談にも乗れそうだ」
「障害者雇用枠かどうかに関わらず、個々の特性(得手/不得手)を見極めて、配慮や作業分担を考えていくことが、円滑な業務遂行に役立つのだと思った」
……などとあり、D&I推進グループとしても業務に活かせる有意義な研修を実現できたのではないかと実感しています。
――研修は「受けて終わり」ではなく、学びを日々の実践に移せることが重要です。基本的な考え方と実践法をお伝えしたので、長く社内でお役立ていただけたらと思っております。
それでは最後に今後取り組まれていきたいことを教えてください。
中村様:
まずは定着率の向上です。
コールセンター業務は「お客様の問題解決をして、喜んでいただく」大変やりがいのある仕事ですが、難しい一面も少なからずあります。
一方でKDDIエボルバとしては、障害の有無にかかわらず、この業界では最高レベルの定着率の良さを誇っています。5年以上働き続けている社員や、正社員登用の実績も多くあります。
それを支えているのが「手厚い教育」と「安心のサポート体制」と「社員の温かさ」です。
サポート体制の一つとして挙げられる「障害者相談窓口」は本社だけではなく全国の拠点にも設置しており、その地域・その職場特有のお悩みにも相談員が対応しています。
このように、KDDIエボルバのD&I推進の仕組みは徐々にできつつあります。これからはさらに一人ひとりが持つ力を信じて、しなやかで多様性のある組織として前進させていきたいですね。
――ありがとうございます。「精神疾患をお持ちの方は約5人に1人、発達障害をお持ちの方は約10人に1人」とも言われています。ご感想にもありました通り、「障害」といったラベルを見るのではなく、お一人おひとりの個性や得意に向き合っていただくことが重要です。この研修がKDDIエボルバ様の一層のご発展に繋がりましたら嬉しいです。